札幌市清田区のうすだ動物病院の診療対象動物は犬、猫、ウサギ、ハムスターです。

うすだ動物病院

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症例紹介

前回は、猫の慢性腎臓病についてお話ししました。

そもそも、どうして猫に慢性腎臓病が多いのでしょう。

様々な説があるのですが、AIMというタンパク質が関与しているのではないかと、いう最近の報告について、

もう少し詳しくお話しします。

 

AIMとは、免疫系に関与しているタンパク質の一種です。人における研究では、急性の腎障害が起こった際にダメージを受けて脱落した細胞を除去するサインをだし、尿細管のつまりを改善することがわかりました。つまり、腎機能を改善する働きをしています。

AIMは、血液のなかのIgMという抗体とくっついて存在しています。IgMから離れて腎臓内に入ることで、AIMは機能を発揮し、細胞の除去指令ができるようになります。

猫にもこのAIMはあるのですが、IgMとの結合力が強すぎるために、人のAIMのように腎臓でうまく機能していないことがわかったのです。

つまり、猫では急性腎障害が起こっても、腎機能を改善するような機能がうまく働いていないということです。それが、慢性腎不全に進行してしまっている可能性があるのです。

ちょっと難しい話になってしまいましたが…

腎臓で働けるAIMを、薬として投与すれば、猫の悩ましい腎不全の根本的な予防・治療になるのでは?!

高齢の猫の多くが慢性腎臓病で命を落としていることを考えると、このお薬が開発されれば、猫の寿命30年時代がくるのでは?!といわれているのです。すごい大発見ですね!

※ちなみに、AIMはライオンやトラでもみつかりました!動物園のネコ科動物たちもっと健康になれるかも?!

※詳しくは、https://www.jst.go.jp/pr/announce/20160105/

2019年7月9日更新

病気について獣医師が書くコラムです。

今回は猫の慢性腎臓病についてです。当院でも多くのネコちゃんがこの疾患で通院し、治療をがんばっていますので、ご存じの方も多い病気かもしれません。

高齢の猫でよくみられる病気です。現在、動物の慢性腎臓病は、治癒する病気とは考えられておらず、お薬や点滴で症状を緩和して、上手につきあっていくことが大切です。

原因については特定できないことが多いのですが、糖尿病や慢性尿路感染症などの基礎疾患があること、アビシニアン・ペルシャなどの猫種では遺伝的な関与もあるといわれています。また、近年では、「AIM」というタンパク質が関与している可能性もあるといわれてきました。(このお話は個人的に興味深いので、別の項でご紹介します!)

来院されるきっかけとしては、「水をたくさん飲むようになった」「おしっこによくいく」「食欲が落ちて痩せてきた」「吐いてしまうことが多く、元気がない」「口がにおう」などがあります。しかし、実はこの時点で、腎臓はかなり機能が落ちてしまっていることが多いのです…

そもそも腎臓は、体の中でできた代謝産物・毒素を排泄したり、血液や血圧のバランスを整えたりする役割を担っています。腎臓は体の左右に1つずつあり、どこか一部が障害されてしまっても、他の部分が頑張る!といったように、代償機能が高い臓器です。しかし、頑張りすぎるとそのうち疲れて壊れてしまいますよね。しかも、腎臓は頑張り屋なので、相当壊れてしまってからでないと、症状としては現れてこないのです。このように、知らず知らずのうちに数ヶ月から数年かけて、腎臓の機能が障害されていきます。

腎機能の評価は、血液検査・尿検査・血圧測定・画像検査などによって行います。血液検査では、BUN(尿素窒素)・クレアチニンなどの項目が使われてきましたが、最近は、より早期に発見できるマーカーとして、SDMAというものも使われてきています。また、尿中蛋白クレアチニン比(UPC)も早期発見のための指標です。「IRIS」という専門機関では、これらの指標をもとに、慢性腎臓病をステージ分けして治療方針を立てています。

図1

「IRIS」による慢性腎臓病のステージ分類と治療方針(一部改変)

 

治療としては、腎臓への負担を減らすために、タンパク質やリンを制限すること、水を補うことを実施していきます。具体的には、腎臓療法食に切り替え、点滴で脱水を補い、そのときに出ている症状(嘔吐・食欲不振など)を緩和する対症療法を行います。さらに、高血圧は慢性腎臓病の悪化因子となるため、血圧をコントロールすることも重要です。

ずっとつきあっていく病気になるので、ご自宅でしてあげられることもとても重要です。ごはんの切り替えがスムーズにできるように幼少期からドライ・ウェットフード両方に慣らしておく、好きな水の飲み方を知っておく、水を飲む場所を増やしておく、普段からどれくらいのおしっこをしているか・どれくらい水を飲むかを観察しておくなどです。病院に通うことも多くなるので、キャリーケースや病院が怖くないものと教えてあげておくことも大切ですね。

7歳以上になった猫の30~40%は、慢性腎臓病をもっているともいわれています。元気そうに見えても、健康診断などで腎臓の不調を早期発見して、元気に過ごせる時間を増やしてあげましょう!

2019年6月4日更新